Review/レビュー

『マリー・アントワネット』

『ロスト・イン・トランスレーション』でアカデミー賞脚本賞を受賞したソフィア・コッポラの最新作『マリー・アントワネット』。

フランス政府の全面的な協力の下、ヴェルサイユ宮殿で大規模な撮影を行い、キャンディカラーの色調で彩られた豪華な衣裳や、“マロノ・ブラニク”が作ったキュートな靴と、まさに女性たちが狂喜すること必至のこの映画。

これまで『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』でソフィアがテーマとしてきた少女特有のセンシティブな感情や孤立感を、今回も行間のある映像で描き出しているのだが、何はともあれ一番感心したのは“ソフィア自身”の才能の確かさ。

200年以上の歴史を誇るヴェルサイユ宮殿での撮影、さらには激動の18世紀フランスをスキャンダラスに駆け抜けた王妃マリー・アントワネットの映画化となれば、男女限らず、ゴチゴチな歴史映画になるところを、ソフィアはそれを超越し、自らのガールズ・ワールドをダイナミックながらも軽やかに投影。歴史的な背景や言語を超え、ソフィア色に染まったキルスティン・ダンスト演じる王妃マリーからはソフィア自身の育ちの良さが透けて見えてくる。つまりそれは、本物のセレブリティを熟知したがゆえのカジュアルさなのだ。

これだけの“カジュアルさ”で描けるのは、名匠監督フランシス・フォード・コッポラの娘として幼少から一流に囲まれて育った彼女が真のセレブだからとしかいいようがなく(貧富の差でなく)、おそらく庶民出身の女性監督ならこうは描けなかっただろう。

賛否両論が出てくるのは否めないが、逆に今回の作品がソフィア自身の才能の高さを証明した。今、世界中を見渡しても彼女のような監督は唯一無二、まさに“only one”。

この映画をきっかけに、フランス人シンガー“Phoenix”のトーマス・マーズと出会い妊娠した彼女は、再び女性として成長し、新たなガールズ・ワールドを見せてくれるだろう。


マリー・アントワネット
配給:東宝東和=東北新社
監督:ソフィア・コッポラ
脚本:ソフィア・コッポラ
原作:アントニア・フレイザー
出演:キルスティン・ダンスト、ジェイソン・ワルツマン ほか
2006/アメリカ=フランス=日本/123min./カラー
2007年1月20日~日劇1ほか全国にて公開

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